というわけで、数学の成績が伸びた実際の例を2つばかり挙げてみましたが、やはり反復あるのみということです。『学問に王道なし』ということですね。
あるとき、エジプトの王がユークリッドに尋ねました。「幾何学を簡単に学ぶ方法はないか」と。「幾何学に王道なし」――これがユークリッドの返答でした。
ユークリッドは紀元前300年ごろ活躍した数学者です。その頃までにわかっていた幾何学に関する知識を『原論』という書物に集大成した人物として知られていますが、実のところその伝記は不詳で、ユークリッドの存在自体を疑問視する説もあります。それゆえ、先のエジプトの王とのやり取りも、誰かが作った架空の物語なのかもしれません。しかしながら、『学問に王道なし』という言葉が綿々と語り継がれているのは、その中に重大な真理が含まれているからです。
では、反復はどれだけ繰り返して行えばよいのでしょうか。
これについては即答できません。必要とする回数や時間が、個人によってかなり異なってくるためです。ただし、どのような状態がゴールなのかは明らかです。
例えば、料理でも、折り紙でも、何でも構いません。HOWーTO物を見て何かをマスターする時のことを思い浮かべてください。当然、最初は本を見ながらでないとできません。では2回目はどうでしょう。簡単なものなら1度でマスターすることが可能です。でも複雑なものだと、1度やったくらいでは決して身につきません。2回目も本を見つつ、ということになります。では、3回目なら…。必要な回数が何回なのか定かではありませんが、繰り返しているうちに、本に頼らなくても自力でできるようになってきます。これが一つのゴールです。
もちろん、これが最終的なゴールではありません。1ヵ月後、あるいはそれ以上の時間が経過して、果たして自力でできるかどうかが問題なのですが、まずはこの域に達することが大切です。