朝日塾個別教室

小論文の話1   

 秋です。大学受験においては、推薦入試のシーズンです。推薦入試では小論文を課す大学も少なくありません。最近は、小論文模試が行われたり、学校でも添削指導を行ったりと、それなりの対策が取られているようですが、果たして抜本的な対策が講じられているのでしょうか。今回から数回にわたり、小論文対策について考えてみたいと思います。

 まず、どのような小論文が「良い」小論文なのでしょか。それはずばり、「内容の良い」小論文です。
 小論文に関する書籍や記事を見ていると、時折、小論文の採点基準なるものを見かけることがあります。実際のところ、ほとんどの大学が採点基準を明確にしていない以上、採点基準がどういうものなのか、あるいは、きちんとした採点基準が本当に存在するのかさえも不明です。巷に出回る「採点基準」は、大方こんなものであろうという予測に過ぎません。
 よくよく考えてみれば、細かい採点を行った結果「Aの小論文は61点で、Bの小論文は65点、よってBの小論文のほうが優れている」なんて結論が出せるはずがありません。文章の良し悪しは微妙なものなので、明確な数字としてあらわすことは不可能です。それに、細かな採点にはかなりの労力を要するはずです。

 以下はあくまで私の個人的な推測ですが――
 小説の○○新人賞には多くの作品寄せられます。審査員には有名な作家の方々が名を連ねていますが、彼らがすべての作品に目を通すわけではありません。応募作品は、まず編集者によってより分けられます。出版社によって多少プロセスは異なるようですが、例えば、駄目なもの・自分ひとりでは判断しかねるもの・2次審査にまわすのが妥当な作品 の3つに分けます。自分だけでは判断しかねるものについては他の編集者が目を通し、2次審査にまわすか没にするかを決定します。
 おおかた、小論文の採点も、第一段階はこのようにざっくりしたものだと思われます。つまり、大学のスタッフが手分けをして小論文を読み、大まかに分類するのです。受験生が書く小論文の多くはどんぐりの背比べで、飛び抜けたものはわずかです。また、お話にならないものも結構あるので、3段階に分類することは容易です。飛び抜けて優秀なものには合格点を与えるとして、問題は平均的な小論文です。優秀な小論文の数は定員を下回っているはずです。

 ならば、平均的な小論文を書いた者の中からも合格者を出さねばなりません。そこで、用いている言葉だの、誤字脱字だの、原稿用紙の使い方だのと、細かい点をチェックして減点することで優劣をつけているのではないか――と思われます。

 小論文で合格を手にするには、標準以上の文章を書くことが必要です。平均的な文章が書けても合格の保証はありません。小論文の練習を行う際には、内容の良い小論文を書くことを目標としなければならないのです。

 次回は「内容の良い小論文とは何か」を予定しています。